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着席した俺たちをぐるりと見渡し、そいつは口を開いた。
「みなさん……………、
……………お久しぶりです………、
城 戸 秀 一 で す !!」
「…………………………、いやいやいやいや!!」
「なんですか、秋山さん?」
「お久しぶりじゃねーよ! たかが二日ぶりだよ! ってか、ただの連休明けだよ! それまでみんなしてべったり一緒だったじゃんか!!」
俺は全力でツッコんでいた。
この、ひとり起立したちび眼鏡のクラスメイト、城戸秀一くんに!
が、何故だろう、とくに物怖じせず、妙に落ち着いた様子で、彼は俺を見据える。
「はっはっは…、相変わらず素敵に楽しく明るいテンションですね、秋山さん」
「……え、あ、いや…、城戸…、なんか、オマエ、…キャラ変わってない?」
「ふふふ、ご冗談を…。……全く、惚れ惚れです、…はふぅ」
「………はふー、じゃねーよ」
違った。
確かに落ち着いてはいるが、なんかブレてる、ヒトとして。…ったく、なんなんだ、コイツは。
「まぁまぁ、ミツル先ぱい」
俺の目の前に座る一年生女子、桃井奈々子が、にぃッと微笑んだ。
「しゅーちゃんは~、張り切ってるンだよ~、ね~っ!」
…あ、八重歯、見えた。
「桃井さん…、今日も素敵です!」
「そ、そぉ? あ、ありがと…」
おい、若干苦笑いに変わっちゃったぞ…?
が、しかし、城戸は続けてまくし立てる!
「素晴らしい! 実に、スバラシイですよ、桃井さんのその笑顔! さぁ、みなさんも是非、見習って! ほら!!」
「おかしい!絶対オカシイよ!今日の城戸!」
俺は堪らず叫んでいた。 ほら、じゃねーよ…!
…つぅか、城戸くんったらさぁ、もっと、なんつーの、こう…、なよなよして、おどおどしてて、決してヒトに意見を述べるような率先出来るタイプじゃなかったよね!?
「あに言ってんスか、ミツルさん」
ふと、俺の隣りの席の長髪男子がだらしな~く口を挟む。
「あぁ、ほら、あれだ、ミツルさん、知らないンだ。…寝てたから」
浅倉士郎だ。
彼はその長~い脚を組み、ぎっしぎっしと椅子を揺らしてる。
「な、なんだとぅ!?」
「だって、そうでしょ? 会議、全然参加してなかったじゃねぇッスか」
「…た、確かに」
俺は堅ッ苦しい話し合いなんて柄じゃない。 元々はただの雑用係り、つまりはほんの軽~いお手伝いの気持ちで参加したのだった。 だから、会議の半分以上は…、寝ていた!
「じゃ、あれッスね、今日、なんでこのメンバーで集まったのかも知らないんスね?」
な、なんだよ、浅倉ぁ~。 オマエ、俺を年上だと気付いて敬う様になったンじゃなかったのか!? その、若干上からの態度は何だ!
だが、しかし…、ワケが分からないのは事実だ。 ここは正直に下手になろう。 俺もダブり、つまりは留年生として、世渡りはそこそこ経験済みだし。
「うん、知らない。 何なのこれ? ねぇ、今日、何の集まり?」
「それはですねぇ、秋山先輩」
それには斜向かいの女子、一年生の神埼まひるが答えてくれた。
「アタシたちは先日の合宿で結成された、新組織なのです」
「新…組織…、だぁ~!?」
確かに、先日までのゴールデンウィークで行われた、生徒会役員による合宿。 正式役員はもちろん、俺をはじめ、つーか、俺自身はついでのつもりだったが、ここにいるメンバーも全員参加した。 今期の活動方針やら各部予算振り分けやら、なんか色々会議してた…、気がする…、俺、八割方、遊んでたけど…、って言うか…、
「おい!こら!浅倉ぁ!そーいやオマエも一緒に遊んでたよね!?」
「あー、楽しかったッスね~、ミツルさん。肝試しとか、意外と、何気に、うん」
「…アンタら、何してたのよ、大事な集まりだったでしょうが…」
なんか、部屋の隅っこにいつの間にか居た体育教師の三島センセーに厭きれられてしまったが…、まぁ、いいとして…。
「浅倉、じゃ、なんでオマエは知ってンの!?」
「いや、オレは全部出てたもん、会議」
「なっ…、おま…、…け、かったりぃ、やってられっかって…、早々にフけるような素振りをしたはずじゃ…! くっそぅ! だましたな! えぇい! まひるちゃん、こんなのいつ決まったの!?」
「はい。秋山先輩が不参加だった最終日の会議に結成されました」
「さ、最終日…って…」
「あー、あれね、ミツルくん、キミ、朝から煮込んでたわね、私と一緒に」
「み、みしまセンセー…」
「秋山さん、あのとき何を…? と、言うか、今回の合宿で一番の思い出は、何ですか?」
ややあって、城戸の問いに、俺は答えた。
「カレー…」
『ですよね~』
「違う! 二日目が肝心なんだ! 二日目の煮込み具合でその辛味と旨味が…ッ」
『…はいはい』
いや、みんなしてそんなににっこり微笑まなくていい!
「でも、美味しかったよね~、ミツル先輩のカレー」
「えー! なんか甘すぎじゃなかったかぁ、あれ~?」
「あぁ、たぶん、別鍋だなー、それ。 ミツルくん専用鍋」
「どおりで! ふたつも鍋があったワケですね! まひる的にはどっちも好きでしたよ!」
「ふふふ、秋山さんは甘党…、と」
やめろ、オマエら! そんなとこで盛り上がるな! 早く本題に行け! …あと、城戸、メモるな!!
「…さてさて、みなさん、そろそろ…、いいですかぁ?」
ぱんぱんっと、手を鳴らし、城戸が仕切り直す。
「本日、みなさんに集まってもらったのは他でもありません。そう、いよいよ、このメンバーによる足高の新たな試み…」
こほん、と、咳払いひとつ、そして城戸は、こう、告げた。
「第二生徒会、発足です!!」
………は?
え?
なに?
なんだって…?
…って、
「だいにせいとかい…ッッッ!?!?」
「その通りです、秋山さん」
「その通りじゃねーよ! なんだよそりゃぁ!?」
「いいですか、秋山さん。 我が足ヶ丘高校、通称足高は、その自由な校風の元、生徒たちの自主性を促す教育方針と伝統を築いてきました。 そのため、委員会などは必要最低限を除き、存在がありません。 ですので、生徒会が学校内雑務その多くを担って来たのが事実です。 ですが、やはり人員不足による問題も多発しております。 そこで、今期、新たなる試みとして我々は、従来の生徒会をふたつに分け、三年生を中心とした第一生徒会と、そしてぼくら二年生を中心とした第二生徒会を、ここに発足にするに至ったのです」
「単に委員会を増やせばいいんじゃ…」
「このぬるま湯に浸かりに浸かった生徒たちが今さら好き好んで委員会なんぞに大人しく付くとお思いですか、秋山さん?」
「う…、そ、そうか…。…で、察するに、城戸、オマエの立ち位置と役職は…?」
「はい…、ぼくが第二生徒会長、城戸秀一です!」
「なんとなく分かったけど…、まさか二度目の自己紹介ッ!?」
驚愕の俺、だが、勢いは止まらない…!
「ちなみに、他のみなさんは…ッ」
と、そこで、順に他のヤツらが席を立つ!
「第二ふくかいちょー、桃井奈々子なのだッ!」
「浅倉士郎!第二会計だ!よろしくな!」
「第二書記の、神埼まひるです!」
「………え、俺は…?」
「あ、秋山さんは、雑務長です」
「ざつむちょうッ!?」
「いえ、あの、本来はぼくがやるって言ったんですけど…ね」
城戸がやっと城戸らしさを見せる。 ほんの少し。 ていうか、城戸らしさって何だ? 俺にしか分からんだろうが、まぁ、いいや。
と、
「キミにはそれで十分じゃん、ね、ミツルくん? むしろまだこの場に居られることに感謝すべきでしょ~?」
「…ちょ、ま…、って、いうか、三島センセーこそ、何故ここに!?」
「? 私は顧問だから。 第二生徒会の顧問、だ」
「えー…、うっそ~ん…」
いやいやいやいや、じゃぁ、俺、もういっそ、クビでいいよ!
俺にやる気ないの分かってるだろ、みんな!
どーしてみんな俺を巻き込むの!?
「でもさぁ、ミツルさん…」
隣りの浅倉がなんか耳打ちして来る。
…そもそもコイツが生徒会に関わろうとしてるのが、なんか腑に落ちないンだが!
「……あのさ、なんか、生徒会やっとくと、内申点、めっちゃ良いらしいッスよ?」
「………がんばります」
あぁ、俺って、ダメっダメだぁ……。
所詮、ダブりの俺ですから。
…つづくッ。
※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件等とは一切関係ありません。
吉。